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「なんだこれは!?から始まって、そこからどんどんやりとりが始まりました。」(BOH)

OY:現在BOHさんといえば6弦ベースですが、6弦ベースはいつ、どういうきっかけで始めたんですか?
BOH:6弦ベースは音楽学校に入ってからです。僕、最初は普通の4弦ベースを弾いていたんですけど、学校の講師の人が、「セッションミュージシャンで、6弦ベースをたまに弾くっていう人だったらたまにいるけど、完全にメインで使ってる人って今日本にいないから、今からやったらもしかしたら6弦ベースの第一人者になれるかもしれないよ。」、っていう甘い言葉に誘われて始めたんですよ。
OY:リスペクトしている6弦ベーシストがいて、それで始めたわけでは・・・
課長:弾いてみたいな、という気持ちがあって・・・
BOH:いや、ないんです。それくらい6弦ベースに全然興味なかったんです。重たいし。弦代は高いし。
OY:上(高音側)と下(低音側)で1本ずつ多いんですよね。
BOH:そう。でも当時既成品で売られていた6弦ベースって、6弦だけ変な音だったりとか、1弦がバキバキし過ぎだったりとか、全然使い物にならないものばっかり。しっかりした、いろんな現場で使えるベースを見つけないといけない、と思って、いろんなメーカーを訪ねているうちに、今使っているATELIER Zというところと出会った。それが20才の頃だから、もう16年以上ATELIER Z一筋。
課長:最初はそういうきっかけだったんですね。今ATELIER Zの6弦といったらBOHさん、というのが世の中のイメージですよ。
BOH:僕しかいないですから。最初ATELIER Zで僕のモデルを作ってもらった時、ATELIER Zのエンドーサーで日野賢二さんって人がいらして。
課長:JINOさんですね。
BOH:JINOさんの実のお兄さんがATELIER Zでマスタービルダーやっていたんです。今はもうATELIER Zやめてアメリカ戻られましたけど、僕のベースはそのJINOさんのお兄さんに設計してもらったんです。ちゃんとした6弦ベースを作って下さいって。でも、「そんなオーダー受けたことがないから、変なのができるかもしれないよー。」、と言われましたよ。でも他に選択肢がないので、「お願いします!」って、なけなしの貯金をはたいて。
課長:出来上がって最初さわったときに、あ、これこれ!ってなりました?
BOH:いや、ならない。
課長:じゃ、そこから弾き込んでいって、これこれって感じにしていったんですか?
BOH:なんだこれは!?から始まって、そこからどんどんやりとりが始まりました。ここをもっとこんな風にしたら弾きやすくなるとか、ここをこういう風にしたら音的にはATELIER ZのつくるATELIER Zの音に近づくとか、いろいろ。でもこのベースはあくまでも僕個人がオーダーしているわけだから、そういうブランドとしての音はいらないんです。あくまで自分がいろんな現場で使いたいから、ネックの仕込み方とか厚さだとか、どんどんカスタマイズしていった。それでも間違ったことは言ってなかったんでしょうね、作り込んでいくうちに、「これはBOHモデルにしましょうよ」、って言って頂いて。
課長:なるほど。そうやってブラッシュアップしている中で、BOHモデルにしようという話が出てきたんですね。
BOH:たぶん、めちゃくちゃ迷惑な客だったと思うんです。だって当時名前も売れてなければ、仕事も大してしてない、ただの音楽学校の、しかもまだ講師でもなんでもない時代。最初にATELIER Zの門を叩いたのは19才の時だから、要するに、これからミュージシャンになりたいですっていってる田舎出身の北海道訛りのわけわかんないやつがやって来て、出来たら出来たで週一くらいで電話していちゃもん付けまくるっていう。
OY:そういう声はメーカーとしてすごくありがたかったと思います。自分たちが意図していないことを、ユーザー視点で聞かせてもらえるというのは、いろいろ発見もあるし、次に活かせる生きた言葉なので。
BOH:一回いいなと思ったらその関係を続けていくんです、ATELIER Zしかり。他にも弾いたことありますし、良いベースもあるんですけど、僕はATELIER Zに救われたからATELIER Zは裏切らないと決めたんです。MarkBassもそう。ケーブルに関してはオヤイデ以上と思っているとこは本当にないです

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OY:BOHさん、手は大きいんですか?
BOH:僕小さいですよ。
課長:僕と同じくらいですね。ベーシストとしては小さい方ですよね、僕ら。
BOH:ずっと弾いてるから爪も小さくなっちゃって、ピッキングハーモニクス出したいので中指の爪だけ少し伸ばしてますけど、それ以外は全然です。小指は女の子みたいなサイズ。
OY:フレット幅もギターより広いし、6弦ともなれば手も大きいのかと思っていました。
BOH:手の大きさというよりも、肘の使い方ですよね。
課長:ベースの方が手小さくてもどうにかなりますよ。ギターの方が握り込むから大きさとか指の長さは必要なんじゃないですかね。
OY:ギターはコードおさえる時に、複数指使うので長さが必要になってきますね、確かに。
BOH:僕、変な話、Fコードおさえられないですもん。おさえるまで10秒くらいかかります。
課長:たまに、アコギやりましょう、みたいなことあるじゃないですか。僕それを最初にやったのが武道館だったんですよ。コードチェンジとかやめてよ~(泣)みたいな。それに比べて、ベースって本当に楽しい。
BOH:僕はギターみたいなプレイも可能だから6弦ベースにしているというのもあります。もちろん6弦でコードをばーんと、曲を通して使うわけではないですけど、コードも弾けてメロディーも弾けて楽しいし、幅があります。サポートベースの話だと、今の時代って5弦までは弾けないとダメなんです。ベースに求められる音も低くて、打ち込みで曲作る人はベースに低いところを求めてくるんですよ。そこに対応できないとダメで、6弦である必要はないけど、それプラスアルファで高いところでいろいろできるよ、というのが僕の売りになっているというか、面白く感じてもらえているのかなと。
OY:BOHさん指長いのかと思っていました。6弦ベースだし、指が長くないと弾けないんじゃない?って。
BOH:よく言われるのが、意外と手は大きくないんですね、と、実際に会うとそんなに背そんなに高くないんですね、です。あと僕指の関節が一つ多いんですよ。
OY:えっ??
BOH:手を開いてるとわからないんですけど、普通にグウを握ると、関節と関節が重なっちゃってグッと握り込むことができないんですよ。
課長:実は有名ですよね、BOHさんの関節。拝見するのは初めてですが。
OY:演奏で不自由することはないんですか?
BOH:ぐっと握り込むことがないので問題ないです。普通の生活でもここまで曲げるってことはあまりないですし。医者に確認すると、1万人にひとりだそうですけど、世界的にこういう人は確かに存在しているそうです。
OY:1万人にひとりのそれがホモサピエンスの進化過程だとしたら、次の人類は関節ひとつ多くなっているかもしれませんよ。そしてサピエンス全史に載ると。
BOH:ハゲは人類の進化ですから。動物って身を守るために体に毛があるでしょ。それが進化するにつれて薄くなっていって、その先にハゲがある。
OY:火星人とか宇宙人のグレイとか。
BOH:そう、その先の進化がそうなるってなんかの本で読んだな。ウソだと思いますけど。

*6弦ベースを考案したといわれる“Anthony Jackson”

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