「ここで出来ることをより深く、今までやってきたことをより高く」

プライベートスタジオを構えてから2年。フルアルバムを1枚、サウンドトラックを1枚、そして2013年11月にフルアルバム「Quiet Fanfare」を完成させたCaravan。今までのキャリアを通して最高傑作と言っても過言ではないこの新作は、録音からMIXに至るまでこのスタジオで、Caravan自身の手によってつくられている。今回のインタビューでは、アルバム制作の過程もたっぷりと話して頂いた。

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「選択肢が限られていてなんでもできる場所じゃないから、かえって迷わなくていいのかも。」（Caravan）

OY：新作の「Quiet Fanfare」はここでつくられたアルバムとしては3枚目ですが、今回の作品はとても密度が濃いものに感じられます。

Caravan：録りもMIXも全部ここでやったので、今まで以上にここでつくった感もありますし、そういうところが作品の密度として出ているのかもしれないですね。

OY：外スタジオではなく、ここで録るようになって、やり方やフィーリングに変化はありましたか？

Caravan：外スタジオだとモニター環境もそれぞれ違うでしょ。その点、ここは普段から音楽聴いたり、考えごととかもしていたりするところだから、音に慣れてる分、戸惑わないで録れてる音を冷静に聴けていたかな。それと一人でこもれるから周りに気を使わずに、時間も気にせず集中できるのも大きいですね。

OY：そこら辺の制約がなくなったということは良いところもあるだろうし、逆に、

Caravan：そうそう、やっぱり外のスタジオならではの緊張感とか、バシっとやるぞっていうモードに持っていくのが難しいところはあるかもしれない。

OY：そういう時、スイッチはどんなふうに入れるんですか？

Caravan：でも不思議と、さぁ録るぞ、ってなったらここでも緊張感は出てくるんですよ。自分もあんまりダラダラやるのが好きじゃない性格だから、3テイクでいいギターソロを弾いてやるとか、自分なりに縛りを設けてメリハリつけたりしてね。

OY：ある意味、時間は無限にありますからね。

Caravan：だからある程度は自分に課したりすることもあるけど、そうは言っても納得いくまで取り組めたりとか、あ、今録りたいって時にすぐ録れたりとか、メリットはすごくありますよ。同じことを外のスタジオでやるとなると、あ、こういうの録りたいってなったら、まずスタジオに連絡して空き日をきいて、じゃあその日の午後とか夕方とかってなったらなったで、その時までモチベーションを維持するのも大変だったりする。でもここだと、家でご飯食べてる時にひらめいちゃったりしても、ちょっと今から行ってくるっていうことができるから、そういう意味では自分にはあってるかな。

OY：手探りだった自由との付合い方が、ルールやフィーリングとピタっとなじんで無理なくハンドリングできてる。

Caravan：自分でここで録るコツや勝手がわかってきて、ここで録れる音のクセや、できることも徐々にわかってきた。というか、できないことがハッキリしてるしね。ベースをアンプ通してデカい音で録ることもできないし、ドラムをスティックでバシバシ叩くこともできないし、バンドで一発録音もできない。選択肢が限られていてなんでもできる場所じゃないから、かえって迷わなくていいのかも。できる範囲で工夫して、たとえばマイク6本立てたいんだけど4本しか立てられない、じゃぁその中でなんとかしよう、って。