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「エージングは、PA-02 V2もQAC-222も2時間から3時間はやらないとだね、最初はちょっと暴れん坊さんだから。」(ミト)
この日はいつもクラムボンのLIVEでPAを務めている、エンジニアの西川一三氏が合流し、通しでのリハーサル。
Vocal含めたすべてのマイクも本番と同じものを使ってのリハーサル終了後、メンバーに今回のワイヤリングについて忌憚なく話してもらった。
OY:ミトさんは今日はマイクが本番と同じテルフンケンですが、QAC-222を通した声の感触はどうですか?
ミト:白い僕がいつも使ってるTUNAMI TERZOよりも、もしかしたらQAC-222の方がピッチはとりやすいかも。不思議と。下支えがいいのかな。
OY:ドラムの方の感触も気になりますが、ドラムは今日は生ですよね。
ミト:そう、生。外に出してるわけじゃないからわからないかな。西川さんどうだった、わかった?
西川(PAエンジニア):わかんない。PA通してるわけじゃないからね。ヘッドフォンでもわからないけど、わかったのはVocalのマイク。これはチューニングしたからね。CANAREと比べるとやっぱり上と下がぐっと持ち上がったんだけど、実はそれがフラットなんだろうね。CANAREの特性が上と下が山なりに落ちてて、QAC-222がフラットにまっすぐなんだろうなぁ、と思う。QAC-222は広がるっていうか、明るい感じになるよね。
ミト:そうそうそう。今度の新しいQAC-222もPA-02 V2も第二世代感がすごくあるのよ。一世代目が僕のFORCE’77G使ってるあの感じ、フラットに対して特性を選んでるみたいな。今回のV2は、今のトレンドというか、主流にいるEDMだったりとかテクノ寄りのものだったりとか今流行っているような音楽、アイドルだったりアニソンだったりとかまで含めてのところでもスペックが全然足りるっていうレンジの幅。今後のハイレゾとか、そういう流れに近いようなものを感じる。若い世代な感じがするじゃない。僕らの言ってるフラットな感じではない、新しいフラットのイメージ。
OY:音像が広がったとか?
ミト:艶は出たよ。レンジが広がって聴こえるから「奥行き」があるでしょ。その分たとえばリバーブ感だったりとか、低い音と倍音とっていうレンジ幅が広くなってるからモニターで聴いててもわかる。
西川:こういう風にしゃべってるだけでもわかるということは、たぶん60hzくらいからこうグイっとやってる感じがある。
ミト:グイっとね。
西川:ハイもだいたい12khzくらいからは、他のケーブルと比べたら成分が在って鳴ってる。出てるってことなんだろうな。聴感上で一発でわかるから、そうなんだろうね。
OY:それはコンデンサーマイクだから拾えたとか、わかりやすかったということもある?
西川:いや、マイク回線のチューニングはSHUREの58。58で差し替えて聞き比べた上での印象。
OY:当日のドラムのトップには、PA-02 V2とQAC-222とどちらを使う予定?
西川:トップはPA-02 V2。今もCD流してエージングしてる。
ミト:エージングは、PA-02 V2もQAC-222も2時間から3時間はやらないとだね、最初はちょっと暴れん坊さんだから。BLACKMAMBA-α V2はまだまだ底がしれないかな。Polarisでもギターアンプでずっと使ってて、もうすぐ100時間だからそろそろ全貌がみえてくると思う。でもね、いいですよ、今っぽい。すごく今っぽい。今の時代の音楽にしっかりちゃんとあってる。BLACKMAMBA-α V2も前のBLACKMAMBA-αの持ってた実直感とはちょっとまた違う感じがするのね。シンセ鳴らしてみてわかったけど、輪郭とかもすごい抜けてくるから、今までちょっと奥まっていたものとかが、レンジが広いからなのか前にも来てるし、かといってどこかが押し出されて逃げてもいかない。前はシンセのカットオフしてるときの音がもうちょっと奥まっていたんだけど、今たぶんレンジが広いからなのか余裕持って鳴るんだよね。シンセでいうと、FORCE’77Gだと腰が見える、一方QAC-222だと上が開けるよね。この新しいQAC-222とBLACKMAMBA-α V2、すごく好きですよ。
「さらにもっと細かいタッチまでひろってくれるんじゃないかっていう期待感があります。」(伊藤大助)
さらにドラムの伊藤大助さんはモニターアンプの電源ケーブルをBLACKMAMBA-α V2に変更、結果モニタリングレベルが向上したとのこと。さらにドラムはマイクをすべてQAC-222でセッティングしている。
OY:モニターアンプの電源にBLACKMAMBA-α V2、どうですか?
伊藤:自分でモニターのバランスを上げ下げするんですけど、いじることがなくなりましたね。一回決めちゃえば大丈夫。多少足りなくても、というか聴こえてないということがないんで、演奏しながらいじることは減りましたね。
OY:VocalのQAC-222の印象を聞くかぎり、ドラムでもしっかりと深いところまで再生できるんじゃないかなという期待があります。本番でマイクを通したドラムの音がどうなるか、楽しみですね。
伊藤:最初に一度に全部変えた時の、そのまんま伝わるっていうのが感動しましたけど、なんていうのかな、ドラムの音がしてればいいだけじゃなくて、その楽器の音がするっていうのがこんなにちゃんと聴き取れるのかって。そうなるとこっちもこっちでマイクで録られる前にどういう風に準備するかっていうことが問われるっていう感じになってきたなと。でもそれはすごくいいことなんで。そういうことを気をつけるきっかけにもなりましたし。今度はまた、まだやってないですけど、さらにもっと細かいタッチまでひろってくれるんじゃないかっていう期待感があります。昨日今日とやってる感じだと。
OY:レンジ幅もあるんですが、上も下も倍音をちゃんと出すので、そのあたり期待できるのではないかと思いつつ、チューニングもシビアになってくるのかなとも思います。
伊藤:それはすっごくいいことだと思います。ちゃんとそのままの音を出してもらう、そのものを拾ってもらうということは、こういういい音にしたかったら、いい音で聴かせたかったら、自分の音にも責任持たなきゃいけない、っていうことですし、元々当たり前のことではあるものの、それをあらためて問われる機会なのかも、と。だから自分も、もうちょっと勉強しないと負けちゃう、というかついてけないっていうのは感じます。それはいいことです。いい音にしようと思ったら、全部どういうつもりでセットしてるのかとか管理してるとかが出ちゃうということなので、それはさらされるべきですよね。でもそれは楽しいことだと思うんです。
OY:さらしましょう。(笑)
伊藤:そうなんですよ(笑)。でもそれって、そのキットの音がするとか、自分の楽器の音が好きだ、この楽器いいよね、ということがそのまんま外に出せるってことなんで、そのためにはプレーヤー側もやるべきことはたくさんあるということですから、気合が入りますね。
「これがベーシックになってきたら、いろんなこと気にしないでもっと演奏がよくなると思う。」(原田郁子)
今回のリワイヤリングで最も影響が出たと思われるキーボード周り。おろしたてぶっつけでのLIVE、回線をフルで新調した直後のリハーサルからエージング後の音まで、様々なシチュエーションを通過してきた原田さん。リハーサル最終日での手ごたえはいかに。
OY:新しいケーブルの音にはだいぶ慣れましたか?
原田:そうだね、ちょっと、いろいろあってね。昨日までの2日間がナンシー(PA)で、今日から西川さんで、そこでも1回全部差し替えをしました。
OY:使いどころを本番と同じワイヤリングにしたって言ってましたね。その中でPA-02 V2を通して使い続けてみて、どうでしょう。リハーサル初日から変わってきてると思いますが。
原田:まず8月のリキッドルームのライブで、本番直前に持ってきてもらった時に、2本試してみない?って言われて。もうそれをさした時点で、ハイがすごい立ってるのが聴こえた。そうするとハイそんなにいらないな、っていってボリュームを下げていくじゃない。そんな調整を演奏しながら、本番始まって2~3曲はやってましたね。2本変えただけで、こんなに変わるんだっ・・・ていう印象はありました。
で、今度は全部を変えて、今日のリハ初日やってみて、最初面白かったのは、みんなどんどん下げて下げてって言うんです。鍵盤周りがすごく変わったから、こんなにいらないってなっていく。わたしは自分のモニターをアンプ(PETERSON)でやっていて、そのセッティングによっても変わるんだけど、わりと弾く時って、真ん中から下の中低域が多いのね。ムゥンってした”まろ味”みたいなのが。でもハイが立ってるせいで左手が聞こえないんだよね。なんだかハイファイに感じるっていうか。で、みんなさらに下げて下げてってなってたんだけど、1日目終わって一晩通電して、次の日来たら、たぶんミトさんも言ってたと思うんだけど、隠れてた部分が出てきた。あっ、ここまで変わるんだったらすごい可能性あるねって。
その時思ったのは、ちゃんとその上の部分があるけど下の部分、艶・・・?
OY:言ってましたね。
原田:普通に弾いてる?って聞かれて、普通に弾いてるんだけど、音の感じが出たり入ったりで。2人の生音に対して、出っ張りすぎてるような、なんか自分の音ばっかり飛び出てるんじゃないかって気がして。でも加減するのは違うのかな?と思って、ちょっといじらないで様子をみました。
そうして、2日目やりながら、あ、こういう感じで出てくるんだ、っていうのが見えてきたのかな。
OY:今日はもう落ち着いてる感じでした?最終的に。
原田:そうだね。なんか不思議なんだけど、いつもだったら、たとえばGOLDWRAPっていうカバーしてるインストの曲があって、すごい細かいことをやっててダラララララダラララララって、左手のダララは2人の中に入っちゃうと、もうほとんど潜っちゃってた。だから、右手の動きで、なんとかそれが聴こえているような聴こえないような。でもこれ(PA-02 V2)は潜らない。だから、やっぱりハイだけじゃないんだね。下のダララっていうところもしっかり出る。もうちょっと使ってると、もっと変わってくると思う。変わり方でいったら、ほんとにおんなじ鍵盤?ていうくらい。
いつもオヤイデのケーブルを試してみようって時、その、変わっていくたびにみんなもその耳に慣れていく時間が必要なんです。これももうちょっと続けると、絶対いい方向に行くっていう感触。
OY:ちょっと変化を面白がって頂いてる感じ。
原田:面白いよ。おんなじフレーズ弾いていても、その存在感みたいなのが、こんなに変わるんだって。みんなそれぞれ聴きながらプレイするから演奏も変わってくるしね。
OY:以前、聴こえ方が変わってモニターに余計な神経を使わなくなるから、その分演奏に集中できるって言ってましたが、そういうところが今回ガラっと変わったことでその辺りはどうなのかな、というのが気になります。
原田:今はまだ前の感覚を覚えてたりするから、耳を慣らしている時間かな。これがベーシックになってきたら、いろんなこと気にしないでもっと演奏がよくなると思う。
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