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曲によってはベースを弾いたり、REACTORにファイルを投げ込んでループ素材をつくったりしながら。そういう作業を一人で地味にやってたね。(堀江)
OY:NEIL AND IRAIZAがいわゆる堀江さんだと思っている人も多いと思うんですよ。
堀江:そうだね、世代によってはあるかもね。でも振り返ってみるとここ10年くらいはあまり歌ってはいないし、いろんなところでキーボードをぐわーって弾いてたよな、と思ってて。
OY:実はそうなんですよね。そういう意味では華やかなゲストを迎えてのコラボレート感あふれる一枚、みたいなこともあるかも、と想像しました。
堀江:それはいつかやってみたいな。そうやって、出会っていろんなとこで弾いてるうちに鍵盤がどんどん増えてったんだけど、同時に使わない鍵盤も増えてった。それでそれらを触っているうちに、ただ鳴ってる段階の音から曲をつくっていこうかなと。
OY:ということはハードウェアをたくさん使ったということなんですか?
堀江:そうそう、あとはLIVEで持ち運べない、MULTI MOOGとかチューニングがシビアなものとか。あとはLIVEやレコーディングで好きな音をどんどん加工しながら、この音使えるなって音をどんどん録っていくのね。それらをまとめていったっていうとこもある。
OY:リズムマシンなんかもハードウェアを?
堀江:リズムマシンなんかは、そこにあるTR-909やTR-606、TB-303、あとTR-505をNEIL AND IRAIZAでよく使ってたから引っ張り出してきたりして。
OY:ここにあるウーリッツァーやローズなんかも駆使して、基本的にこの自宅のスタジオでつくられていったということですか。
堀江:ここで大体つくってた。
OY:全編打ち込みといいつつ、シーケンスはリズムトラックだけ?
堀江:ソフトシンセなんかはMIDIになるけど手弾きだし、ハードのシンセなんかもあとからどんどん重ねていって。曲によってはベースを弾いたり、REACTORにファイルを投げ込んでループ素材をつくったりしながら。そういう作業を一人で地味にやってたね。
OY:バンドものは?Bill Withersのカヴァーとか。
堀江:バンドものは3曲。Bill Withersの「USE ME」のカヴァーと、「MACKY-D’s AVENUE」と「THE BOYS OF CLOWN」。この3曲はスタジオで1回ベーシックを録ったんだけど、その後のダビングは全部ここで仕上げていったんだよね。
OY:そういったバンドスタイルのものは、こういう曲をこういうアレンジでやろうってはじめから考えてベーシックを録ったんですか?
堀江:スタジオに入ることになったから、曲書かなきゃなって思ってそこから急いで曲を書き始めたの。
OY:(笑)。いろんな音を出して拾ってまとめていく中で、アルバムにしようって思い始めたわけですよね。そうなってからは、よし、じゃぁアルバムつくるぞっていうテンションでつくりはじめたんですか?
堀江:うん、と思ったんだけど、なかなかできなくてアルバムを意識してから3年くらいかかってる。3年の中には途中とまってたこともある。
OY:その間にもどんどん断片的なものを貯めて。
堀江:そう。こういう感じのスケッチのようなものが徐々にまとまっていったっていうのに近いかもしれないね。
今回はメロディーを切り捨てるっていう発想を実行にうつすことが、ひとつの賭けだったんだよね。(堀江)
堀江:一番最初にできた曲は、スタジオに入るときにつくった曲だから、「THE BOYS OF CLOWN」になるかな。
OY:9曲目の「DAZED AND AMAZED」はpupaをやってた頃の曲ですか?
堀江:たぶんそうだね。あと4曲目の「TRANSPARENT」もpupaをやってる時につくってた曲だと思う。
OY:いろんなところで弾いてるから、いろんな音楽を吸収していろんなタイプの曲としてかたちになってきますよね。
堀江:そうだね。まぁここだと鍵盤しかないから、ギターとかももっと録れたんだろうけど、やっぱり鍵盤中心のものにはなっていくんだけど。
OY:ここでダビングして録りためて、ミックスも?
堀江:ミックスは、太田桜子さんが全曲ミックスしました。ちょっとした録りとかトリートメントなんかも一緒に。太田さんは、自分でもGrand Galleryというレーベルでダブやハウスのアルバムをリリースしていたりして、レーベル・オーナーであり、プロデューサーでもある、井出靖さんのアルバムやヴァイオリンの金原千恵子さんのアルバムとかも手がけていて。これらのサウンドに興味があって、いつか太田さんとなんかやりたいな、と思ったのが出発点。
OY:堀江さんはピアノもオルガンもシンセも弾きますけど、「MACKY-D’s AVENUE」なんかを聴くとオルガンサウンドが主役で、個人的には堀江さんはオルガンを鳴らす、弾く人っていう印象がけっこう強かったりするんですよ。いろんな鍵盤の中でもオルガンに重心というか、どうでしょう、あるんですか?
堀江:オルガンは、そう、あったりするね。ピアノは家にないけど、オルガンは持ってるっていうわりと単純な理由なんだろうけど。でもthe HIATUSから知った人からするとピアノ弾きって感じなのかな。シンセはあんまり得意じゃないし。それもあって今回ソロアルバムではシンセの音がいっぱい入ってる。
OY:なるほどね。
堀江:苦手なやつを積極的に。他にも、打ち込むっていうビートの概念があんまりなくて。AKAIのMPCとかあるのに、これどうなってんだ?ってとこから始まるっていうか。
OY:といいつつ、打ち込みは全部自分で。
堀江:そう、やってた。やった。
OY:いやでも打ち込みのスキルは高いものがあるなと思いましたけど。
堀江:そんなことはないでしょ(笑)。今回はメロディーを切り捨てるっていう発想を実行にうつすことが、ひとつの賭けだったんだよね。それで、だからメロディーがない曲も結構あるんだけど、やっぱ自分はまだそこが捨てられないんだよね。フレーズとか。ほんとにビートを愛する人からしたらそこもバッサリいくじゃない。
OY:そういうアプローチをしつつも、やっぱり根っこのところ、ルーツはブルースとかソウルで、これを発展させてきた作品だと思うんですけど、プレーヤーとしてだれか意識してるとか、そういう人はいらっしゃいますか?
堀江:スティーヴ・ウィンウッドが好き。スティーヴ・ウィンウッドの最高な歌を取っ払うと、今回のアルバムみたいなサウンドになるんじゃないのかな。違うかな?(笑)
OY:スティーヴ・ウィンウッドは僕の世代だと「Higher Love」なので、ん?そうかな?と思いましたけど、”Spenser Davis Group”のテイストってことだと、あぁなるほど感ありますね。印象的なオルガンプレイも多いですもんね。
堀江:カヴァーの「USE ME」のデモ時点の音がこれなんだけど、チャカポコしたトラックにオルガンでなんとなくそんな感じでしょ。この曲はバンドでやったんだけど、デモのホームメイドな感じで出してもいいなと思ってて。
OY:これはこれでアリですね。こうやって聴くとJimmy McGriff的オルガン、とかじゃないですね。もうちょっと奥ゆかしい。
堀江:うん。こんなふうにちょっとずつ音源をつくってたんですよ。制作は2011年くらいからベーシックはじまって2013年とかまでだから、デモの時期もかなりまたがってる。
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