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僕は音楽を作る者として、音楽の役割は何かっていうことや、音楽を通して自分ができる表現とは何なのかっていうことを追求しました。

O Y:アルバムの完成まで1年間ほどかかりました。
 S O:そうだね。本当はMONDO GROSSOのアルバムもうまくいけば昨年の夏の終わりぐらいにリリースするはずだったんです。その前にベストアルバムをリリースするアイデアがあって、BoAちゃんが歌った「Everything Needs Love」を再録しようとなった時に、コロナのこともあってレコーディングのスケジュールがなかなか調整できなくて。今の世の中って色々と分かんないじゃないですか。一日一日どんなことが起こるかなんて。それで長引いたということもあって、全体的にリリースも後ろにずれたんです。

O Y:一昨年の暮れくらいに話した時には、来年の夏くらいの予定って言ってましたね。
 S O:でも今になって考えれば、結果的に全てこれで良かったのかなと。もしかしたら当初の予定通りリリースを強行していたら、このキャスティングになっていなかったかもしれない。
O Y:今回のゲストボーカルのチョイスって、大沢さんが大体やられたのですか?
 S O:いや、僕がこれやりたいって自分で出したのは、どんぐりずとCHAIと、それぐらいちゃうかな?あと田島くんか。坂本(龍一)さんも元々大好きなんですけど。満島ひかりちゃんと、この曲でこんなことをやりたいっていうのや齋藤飛鳥さんはスタッフのアイデアですね。みんなから出てきたアイデアを、大喜利感覚でやって起きる化学反応の採用です。

O Y: MONDO GROSSOは女性の方をフィーチャーされることが多いと思いますが、その中でOriginal Loveの田島貴男さんが参加されていたのが面白いなと思いました。楽曲的には元々のMONDO GROSSOのイメージに近いと思うんですが。今作の中では逆に良い違和感になっているというか、アクセントが効いてる感じがしました。
 S O:田島くんは、それこそアシッドジャズみたいなことが言われだした90年代の頭ぐらいのデビュー以前から割と交流があって。近いところにいるのに一緒にやったことがなかったんで、いつかやりたいなと思っていて今回実現しました。
O Y:前作と今作では、何か変わったところとか、大沢さん的に意識的に変えたところってありますか?
 S O:前作というよりは、今までのMONDO GROSSOのリリースの中で、明確にそのアルバムのコンセプトをテーマ的に語ったことはないんです、実は。
『NEXT WAVE』の時も、ぼんやりと新しいことやろうよってことぐらいだったんで。今回はやっぱりとりもなおさず、パンデミックの中で本当に世界が激変してしまったわけで。しかもこれ元通りに戻る様子もなくって、どんどん変わり続けていってしまう。それがどこで落ち着くかも分からないような状態の中で、僕は音楽を作る者として、音楽の役割は何かっていうことや、音楽を通して自分ができる表現とは何なのかっていうことを追求しました。アルバムでそうやってテーマ設定したこと自体が割と珍しいし。ここはあんまり言語化したくないんで敢えて言わないけど、その大きなコンセプトから紐解いて、各シンガーと歌詞の打ち合わせをしたり、自分でも詞を書いたりもしたんで。
詞の世界に自分から入っていったのも、言葉の世界に入っていくのもMONDO GROSSOでは初めてのことだと思います。

O Y:今までは、アルバムに決まったテーマを設けたり、楽曲や歌詞にメッセージ性を敢えて込めてこなかったってことですね。
 S O:そうですね。でも今回も実は、メッセージを込めているわけではなくて。自分で設定したテーマをきちんと歌詞の中に反映させていってるだけで、これは別にこういうふうに受け取ってほしいってメッセージが入ってるわけではないかもしれない。
O Y:今回のアルバムは、生音もけっこう使われてるんですか?
 S O:ギター・ベースと弦ぐらいですかね。あとはだいたい全部デジタルですね。
O Y:前のアルバムの楽曲からは、ライブができるイメージが浮かんでくるのですが。今作からはライブのイメージが想像しにくい気がします。僕がもう前のライブを観ちゃってるせいもあるかもですが。

 S O:確かに作ってた時はライブでやることはあんまり想定しなかったですね。だからMONDO GROSSOでやるライブのスタイルも大幅に変わっていくと思います。ライブのあり方を考えた時に、前から疑問なんですが、打ち込みが主体のライブで、人力で演奏することにどれだけの意味が見いだせるか。それが例えばアンプラグドのアレンジにして、素晴らしいものになるとか必要性があれば別です。ただなんとなく生音に置き換えてしまって、音源にあった良さが失われてしまうライブって結構あると思うんですよ。僕はそういうのにはなりたくないし。例えば、ダフトパンクが、ほぼいるだけで何もやってないみたいなことを言う人がいるけれども。実際にあれだけ、何千、何万人という人を喜ばせるライブができることの方がある意味正解なわけで。だから誰かが生演奏しているっていうことが、もはやライブの一番大事な定義ではないと思ってます。だから僕もスタイルをもっとアップデートして、何をもってライブとするのかってことを追求したい。
O Y:それはちょっと楽しみですね。でも大沢さんのベースを弾かれてる姿も好きですよ。
 S O:自分でできる楽器は色々とやると思うけど。フルバンド全員いないとこれができないっていうよりは、もうちょっと自由にやりたいかな。

O Y:人数多いとその分消費するカロリーも高いですし。
 S O:音楽業界ってまだ経済的に完全に復活はしていないわけで。
O Y:今はなおさら、前みたいにお客さんも入れられないですからね。ライブはまだどういうスタイルでやるかってことも含めてこれからですね。それが決まった際には是非オヤイデもワイヤリングでお手伝いさせてください。
S O:そうですね。ただ今はご多分に漏れず、VRとか空間での演出っていうものがすごく好きになって。一緒にやろうとしているチームがいるんで。まずは、バンドというか演奏を含むようなライブの前に、このアルバムでDJ+VJツアーみたいなことやる予定です。昔やった『LIVE ON THE NEXT WAVE』にちょっと近いかも。それをアップデートしたバージョンですね。

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