COLUMN
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「mouse on the keysはちょっとB級感あるんですよ、toeより。」(川崎)
川崎:ぼくらmouse on the keysの目指すところはジャズトリオじゃないんです。あくまで1989年前後の感じ。
OY:といいつつジャズも聴くんですか?
清田:聴きます。今ジャズといえるかどうかわからないようなジャズ、最近のジャズはプログレッシブになってきていて、ジャズのアーティストの作品なんだけどジャズっぽくないものとか。
川崎:最近のものが多いですよ。Avishai Cohenのトリオものとか、トリオが多い?
清田:トリオがいいってわけではないんですけど、入りやすいっていうのはありますね。
OY:Avishai CohenはどっちのAvishai Cohen?ベースの方?
新留:ベースの方です。
OY:ですよね。去年、写真家の太田好治さん主催の「SKSD -初期衝動-」のLIVEの時、mouse on the keysを見ながらいろいろ考えていたんですが、その時にAvishai Cohenの「Adama」っていうアルバムのことを思い出したんですよ。このインタビュー前に改めて聴いてみて、あぁここまでジャズじゃないなと思いましたけど。
川崎:Avishai CohenとかBrad Mehldauとかめちゃくちゃ好きです。好きですけど、僕らがやることじゃない。彼らのようにバークリーを出ているわけでもないし、僕としては根本に何度も出てる坂本(龍一)さんの影響があって、且つポストハードコアの影響があって、そこをミックスするっていうのがmouse on the keysのキャラクターであり特異性であると思っているんで。
OY:mouse on the keysのみんなはいわゆるバークリーメソッドは?
川崎:いや、やってないです。ドラムレッスンと30歳すぎてからのクラシックピアノです。
OY:ほんと!?
川崎:やれっ!って(笑)
清田:新留さんドラマーですもんね。
新留:もともとはドラムで色々活動していて。Tommy Campbellというドラマーに出会って、手伝いをする代わりに無料でレッスン受けたりとかもしてました。
川崎:トメさんがいいのは、90年代後半のNYでHip HopとJazzがリンクするような実験の現場を見てるんですよ。
新留:1998年から99年にかけて1年くらいNYにいて。日本人のやっている店でバイトしながら、ただでみれるライブハウスとかJazzのハコがあるのでそういうとこにずっといて。サンプリングしたものをループした時のよれた感じとかプログラミングされたビートの感じを生演奏でやったり、それこそJ Dilla的なビートの生演奏というか、そういうセッションをいっぱいやってたのを現場で体験できたんです。The ROOTSっているじゃないですか、彼らも毎週Wetlandsというクラブでオープンマイクのセッションのホストをやってて、そこに参加していたネオソウルの連中とかがぐいぐい出てきてメインストリームになったり。だから面白かったです。観ていて。
川崎:やってましたね。
清田:僕は2000年入ってからなので、その頃はまだいないんです。
川崎:1997~8年くらいからnine days wonder初期が始まって。当時としてはアメリカの90年代DIYハードコアの感覚というのを圧倒的に実現していたのがenvyだと思うんです。そして初期nine days wonderのサウンドはその流れで。当時の人達はかなり感覚が早かったなと思うんですけど、僕はその頃SQUAREPUSHERやAphex Twinを新鮮に感じていたので、こう言ったシーンの存在意義があまりわかっていなかった。僕はやり始めの頃、なんで今更、音質や演奏が劣化したようなものをやんなきゃいけないのか、って心の中で思っていたんですよ。
OY:でもムーヴメントとしてはアンダーグラウンドで先端だったわけですよね。
川崎:ざっくり言えば、その頃のアメリカンDIY音楽ムーブメントっていうのは、それまでアンダーグラウンドで大事に培われたものが、グランジ=ニルヴァーナでオーバーグラウンドへいっちゃったことへの怒りとか幻滅があったんだと思うんです。そのカウンターとしてあったのが90年代DIYハードコアとかの人たちで。これを日本でいち早く実現し進化させたのがenvyではないかと。
OY:なるほど。
川崎:僕は、90年代DIYハードコアの出現は、アイコンになるようなロックスターの時代の終焉であり、よりライフスタイルを大事にする人々が主役の音楽シーンだったと思います。envyにしてもtoeにしてもみんな自営で仕事をしながら音楽が好きだからやってるっていうスタイルは、当時の時代性を反映した自然な流れなんじゃないかなと。専業ミュージシャンじゃないっていう価値観が特徴的だと思いますね。こう言ったアメリカの影響がありながらも、僕はどちらかといえばイギリス寄りな趣味だった。ルーツは、ハワードジョーンズとかなんで。
OY:キーマガ(キーボードマガジン)・ヘッズなんだからハワードジョーンズをいつか出すだろうって思ってましたけど、ここで出したのはなかなか唐突ですね。(笑)
川崎:(笑)Genesisとか。デトロイトテクノだったらオリジネーターよりそのフォロアーのイアンオブライアンが好きだったりとか、スタイルカウンシルみたいにアメリカから離れて独自に進化するものが好きだった。
OY:なんとかっぽい、の”ぽい”のところ。でもmouse on the keysにはアカデミックな雰囲気があるんですよ。ゴシック感もあるし。
川崎:坂本(龍一)さんに影響を受けながらその後スラッシュメタルにも影響を受けているんです。
OY:ゴシック感はスラッシュメタル由来なんですか。
川崎:80年代半ば〜後半のスラッシュメタルといえば、メタリカやアンスラックスやスレイヤーですけど、当時自分の中ではVoivodとかKREATORとか、メインから少し離れたところの、メジャーなんだけどややマイナーなものが好きでしたね。これら覇権国じゃないバンドならではの暗さに、僕はゴスっぽさを感じるし、mouse on the keysにもその影響が出ていると思います。Voivod『Killing Technology』あたりのギターの和音(コード)は、メタルにしては、テンション効きまくりでノイジーなものだった。それには90年代DIYハードコアサウンドの萌芽を感じますね。アンスラックスやSODみたいなザクザクした感じじゃない、ぐわーっと滲んだ中途半端で明快じゃないトーンクラスターだからこそカテゴライズできない良さがありますね。Voivodに、ある種クセナキスとかリゲティの要素が入っていたなんて妄想するとワクワクしますね。
OY:スラッシュメタルでも王道から離れて深化するものに惹かれるんですね。
川崎:そう言った独自進化というかハイブリッド感が好きです。シンセの文化でいえばアメリカの影響を受けつつもそこから離れて独自で進化させてるハワードジョーンズや坂本龍一さんに自分は影響を受けているので、アメリカのポストハードコアなどに関しても、斜めから見ちゃう感覚がありますね。僕のドラムスタイルは、ポストハードコアからの影響がありますが、それを援用しながらも坂本龍一さん的な近代音楽のテイストやイアンオブライアン的なデトロイトテクノフォロアーなテイストを標榜していたりミックスしてしまう。だからmouse on the keysはちょっとB級感ありますね、toeより。
OY:(笑)パンチラインでましたね。
川崎:僕の解釈では、toeは王道で、輝いている感じがする。
OY:うん、toeには純粋培養な美しさがあると思います。逆にmouse on the keysはこう言ってはなんですけど、純粋培養感は薄いですよね。
川崎:それが独自性になってるかなとは思ってます。立ち位置としてはそんな感じで、これからもこのスタンスで無理せずやって行こうと思います。
mouse on the keys
日本におけるポストハードコア/ポストロックシーンのパイオニアバンドのひとつであるnine days wonderの元メンバーであった川崎昭(ドラム、ピアノ)と清田敦(ピアノ、キーボード)により2006年mouse on the keysは結成された。2007年 日本のインスト・ポストロックの雄toeの主宰するMachupicchu Industriasより1st mini album”sezession”をリリース。この頃、新メンバーとして新留大介(ピアノ、キーボード)が加入し現在のトリオ編成が形成される。
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