COLUMN
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昨年末のアルバム制作中にスタジオのワイアリングのブラッシュアップを敢行。
アルバムが完成し、このブラッシュアップが大沢氏の制作にどのような影響をもたらしたのか。さらに大沢氏の制作のスタイルまでお話を聞くことができた。
大沢伸一(音楽家、DJ、ミュージシャン、プロデューサー)
93年のデビュー以来、バンドからソロ・プロジェクトとなったMONDO GROSSOを経て、SHINICHI OSAWAとして革新的な作品をリリースし続ける一方、国内外のアーティストのプロデュース、リミックスを数多く手掛ける。また、DJとしても国内屈指の動員数を誇り、海外でも数多くツアーを行う。SHINICHI OSAWA名義のアルバム「The One」はイギリスのSouthern Fried RecordsとアメリカのDim Mak Recordsからもリリースされ、その作品力が世界水準であることが認められた。作曲家、プロデューサーとしては、安室奈美恵、布袋寅泰、ケミストリーなどと次世代のヒット・サウンドを生み出し、リミキサーとしてはデジタリズムやフェリックス・ダ・ハウスキャットなど海外のアーティストに原曲を越えたクラブ・ヒットを提供する、自称”音楽的多重人格者(Musical Multi Personality)”。
Official : www.shinichi-osawa.com
Myspace : www.myspace.com/shinichiosawa
Shinichi Osawa(以下S.O):いえいえ。そういえばエージングが進んできて、音がちょっと地味になってきたような気がしますね。
S.O:そうそう。
S.O:でも、すごくいい音してますよ。
電源ケーブルで派手になっちゃったら意味がないんだけど、「そのまま」で良くなったので。
OY:最初は昨年末に、今度のアルバムの制作中に一気に変えたんですよね。途中で環境が変わったことで、やりづらくなったりということはなかったですか?
S.O:いや、全然なかったですよ。最終的に全部の曲を落とし直してるんで、そういう意味でも全然。
OY:なるほど。途中で変えても、モニタリング的により音が見えてきて良い方向に進んでいった?
S.O:まさにその通りですよ。
OY:最初変えたのはモニタースピーカーのラインケーブルをPA-02に変えたんですよね。その後、電源ケーブルをバンバン変えていって。
S.O:電源ケーブルによる出音の変化は本当に大きいですよね。
OY:その中で、MACKIEのモニタースピーカーにはフラットなBLACKMAMBA-αを選んでます。これは音を良くするというよりもフラット特性の再生音の忠実さが特徴です。
S.O:モニタリングはやっぱりもの凄く大切で。ボクがモニタースピーカーでMACKIEを使っている理由も他のメーカーのモニタースピーカー、なんていうか派手にアガっちゃうサウンドキャラクターのモニターよりも、フラットでなおかつキチンとボディーがしっかりと鳴るものが好みだったんで。
だからそこが電源ケーブルで派手になっちゃったら意味がないんだけど、「そのまま」で良くなったので。
OY:電源ケーブルは色付けのないフラットなBLACKMAMBA-αで、というチョイスはハマったんですね。
S.O:そうですね。
OY:その後メインのMACとI/OのMIXERを変えていったのですが、ここはよりパンチがあって、さらにその機材の特性を引き出せるものに、という意図でTUNAMI GPX-RとTUNAMI GPX。
S.O:実際スタジオでは制作作業を直前までやっていたので、電源回りを変えて音の変化は顕著に感じました。密度が上がったというか、総合的にスケールアップしたサウンドになりましたね。
この流れでアナログのアウトボードの電源も変えてみたんですが、ここは逆にきれいになりすぎちゃって戻したんです。
OY:そうでしたね。このアウトボードは電源を試す前にシールドをQAC-202に変えて、すごくいい方向に変化して。
S.O: いい感じに、すごく音楽的にブーストしてて。
OY:その流れで電源も変えてみたら、今度はクリアで良くなりすぎちゃって。音楽的な雑味まで取ってしまっては。
S.O:やっぱりそのトラックが音楽的にいい方向にいくかどうかが基準だから、良くなりすぎて損なわれるものがあるなら、「変えない」という選択もあります。
ただ、エージングが進んで落ち着いた環境になってきたので、今だったら変えてみてもいいかもしれませんね。変えた直後に比べてだいぶ重心も下がってきましたし。
試してみたいです。
S.O:僕の場合ミックスダウンということじゃないんですよ。曲を作りながらミックスもしているので、ここまでがトラック作りでどこからがミックスダウンでというのがなくて。
作業そのものが全てトラッキングで全てミックスで。
S.O:そうですね。フレーズ一つとってもその時点で最終的な音が決まっていかないといけない。だから常にトータルコンプもかけた状態で作業してますし。
S.O:今鳴っている音が気持よくなかったら先に進めないんですよ。これは後からエンジニアリングでなんとかしようっていう風にやっちゃうと、もうその時点で先に行けなくなっちゃう。
S.O:そうですね。作業が凄くやりやすくなりましたね。小さい音でやってても作業しやすくなった。
S.O:僕はもともと長く時間をかければ良いものができるとは思っていないので。やっぱり最初のアイデアがベスト、ということが多いです。
そういう点も含めて、作業効率は上がったと思います。
S.O:そうですね。僕の場合はそんなに高価なアウトボードの機材がたくさん必要ということではなくて、モニターの環境がいかに自分に合っているかということが重要なんですよ。
それは今回の電源ケーブルやシールドだけではなく、鳴ってるハコ、スピーカーとどんな音がどんな音量で鳴るか、最終形をイメージして。
だからサブウーファーも必須ですし、そういった意味でも僕にとってモニター環境は非常に大事なんです。
「アルバムでは今回のワイアリングが反映されていると考えて?」
「そうですね。全曲に反映されてます。」
S.O:最近は人のアルバムをエンジニアとしてミックスしたりしてるんですが、普通に僕がバラして、この環境でほとんど手を加えずに、このスタジオのシステムを通すだけで音が変わってくる。
環境の影響が出ているんですね。これだけでいい具合に重心が下がってきます。でも何がどう作用してこうなったということは、普通の人がパっと聴いて認識できるようなことじゃないと思うんですよ。
特に僕の場合トータルにもいろいろ使ってますし。なので何がそうさせているかはっきり言えないんですが、総合的に一段レベルの高い環境になってる。
S.O:そうなってますね。
S.O:今の時代の作曲にはエンジニアリングの知識が当然必要だし、サウンドプロダクションにまったく関与せずにやっていくというのは、限られてきてますよね。
S.O:なので、より良いモニター環境作りはクリエーターにとって大切なポイントになってきてますよね。
S.O:国内盤は13曲ですね。
S.O:そうですね。全曲に反映されてます。
<2010年6月 大沢氏スタジオにて>
DIGITAL 2010 6/16 RELEASE
CD&DVD 2010 6/30 RELEASE
【通常盤】1CD+1DVD RZCD-46484/B ¥3,500(税込)
【DELUXE EDITION】2CD+1DVD RZCD-46482/3/B ¥4,500(税込)
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