COLUMN
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ライブの現場で使用されているオヤイデ/NEO製品にスポットを当て、それらの魅力を紹介する企画『OYAIDE Live Report』
第10回は9mm Parabellum Bullet 「19th Anniversary Tour」〜カオスの百年vol.17〜のレポートです。
9mm Parabellum Bullet
2004年3月横浜にて菅原卓郎(Vo,G)、滝 善充(G)、中村和彦(B)、かみじょうちひろ(Dr)で結成。
2枚のミニアルバムをインディーズレーベルからリリースした後、2007年Debut Disc「Discommunication e.p.」でメジャーデビュー。
結成20周年を迎える今年2024年には、東京・名古屋・大阪にて自主企画「カオスの百年」開催決定!
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鳴り止まぬ拍手と轟く様な大歓声が、既に今夜が尋常ではない事を物語っていた。
1曲目は『The World』。
9mmの世界観には、沸る焦燥感や衝動的で暴虐性を含んだ生命の塊を感じる。特に活動初期に発表された本楽曲には、その色が濃く写っていてとても終末的だ。
重々しくもギラギラとした、そして時に血に飢えた様にカラカラと渇いたアンサンブルが、どこをどう取っても9mmだった。
「武道館、始めようぜ」
Vo.Gt.菅原がそう叫ぶと、会場のボルテージは早くもMAXに。
2曲目『All We Need Is Summer Day』は、打って変わって最新アルバムTIGHTROPEからの楽曲。エネルギッシュでメロディアスなラインが、力強くも荘厳な情景を醸し出す。Gt.滝が繰り出すイントロでのトレモロ奏法が、クリミナルでありつつ繊細でいてとても心地が良い。
「はじめようか 熱くなるのが 無理ならどうかしてる」
この展開に熱くなれないのは、マジでどうかしている。
アウトロから流れる様に披露されたのは、3曲目「Black Market Blues」。
頭の1音が鳴ると同時に、弾丸の様に大歓声が上がる。狂乱という言葉よく合う本楽曲は、開放的で耳に残る菅原の歌声、妖気漂う滝のエフェクティブなリフ、Ba.中村のブリブリなフィンガリング、Dr.かみじょうのダンサブルなビート(スネアの跳ね返り音が最高)など9mmらしさが全面に溢れていた。
4曲目「Keyword」。
「何かと戦い続ける」私は9mmにそんな印象を抱いている。本楽曲はそれを象徴する様な疾走感を感じた。
また9mmの魅力の一つとして、コーラスワークを挙げる人も少なくないのでないだろうか。本楽曲では、滝の美しいコーラスサウンドを聞くことが出来る。
ハードコアよろしく重厚感のあるサウンドから始まったのは、5曲目「Story of Glory」。
重々しいリフと叩きつけられる2ビート、ヒロイズム溢れるメロとリリックが輝いていた。
6曲目「キャリーオン」
滝の高速カッティングに会場は疲れを知らず更に盛り上がりをみせる。
砂嵐の様なファズとフルオートでアサルトするブラストビートにまるで子供の様に心を掴まれた。
7曲目「シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜」
全編和式を思い起こさせる歌謡的なメロやリフ、歌詞が印象的な本楽曲。
また菅原、滝、サポートGt.武田のスリーギターによる音の厚みもとても重厚的で9mmの世界観にマッチしていた。
地底を這いずる様な中村のベースリフから始まったのは8曲目「3031」。
地獄の底から睨みつけてくるかの如く、鋭さを持った展開が魅力的で、サビでの滝のリフは、80年代ハードロックにも似た技巧的なフレーズが楽しめる。
しなやかなコードと16ビートから繰り出されたのは、9曲目「光の雨が降る夜に」
イントロのきらびやかな単音リフが光の様に降り注ぎ、中村のベースが雨の如く紡がれていて美しい。
ファンにとって特別な意味を持つことの多い本楽曲が9曲目に披露されたのは、彼らからファンへの感謝の証だと感じた。
流れる様に10曲目「Answer And Answer」へ。
イントロから刃物の様なドライブサウンドとズクズクとした刻みが気持ち良い。サビの菅原の歌い方が切望する様で、グッとくるものがあった。
11曲目「Supernova」
一度聞いたら忘れられないツインギターリフ。サビの混沌とした理の無さに、仕事中の私は、後ろから観客を薙ぎ倒しながら手足をぶん回したくなったが、断腸の思いでそれに耐えた。
印象的だったのは、落ちサビの際の観客の拍手である。皆んなとんでもなく走っていたのだ。
人間の生々しい興奮を感じた。
12曲目は「The Silence」。
哀愁漂うコードストロークから、徐々に力が解放されていく様が美しく、そこから衝動感満載なイントロに繋がれていく。
楽曲が終わると、何も告げる事なくメンバーが袖へはけていく。
これから始まる何かに皆が固唾を飲んで待っていると、
チリーンとライドの音が静かに会場包む。
それと同時に一点の光が、ただ一人ステージに残ったかみじょうを照らしていた。
日本武道館恒例のかみじょうによるドラムソロ演奏が今回も行われた。
少しずつ増えていく手数と、少しずつ覚醒していく音はさながら千手観音の様で、我々はただ見惚れるしかなかった。
幾度となくテンポチェンジを繰り返しながら、日本武道館にドラムの音だけが鳴り響く。
シンバルの擦れる音も、スネアの皮の揺れる残響もその全てのテクスチャが心地よい。
13曲目は「One More Time」。
「出し惜しみなく行きましょう」と菅原が会場を煽り、昂る観客。
「one more one more timeじゃもったいない」と大合唱が行われていた。
ここからサポートギターには爲川を迎え、第二部がスタートされる。
14曲目「反逆のマーチ」
自然と体が踊ってしまうダンサブルな一面を持ちながら、9mmらしいダーカーなコード感が魅力の楽曲。
「ドッドッ」と鼓動の様に、一定に脈打つベースの音色が、重々しく身体に刻まれる感覚が気持ち良い。
15曲目「Beautiful Target」では、初期衝動感に溢れながらも洗練されたアンサンブルを披露した。
鈴鳴りのギターノイズが、蝉の声の如く全てを無に帰していた。
16曲目に披露された新曲では、美しくスペーシーなギターのトレモロリフから始まった。
そこから繰り出されるかみじょうの焦燥感満載の高速ビートの展開が胸を熱くする。
ポストハードコアの色を強く感じさせる力強いサウンドには、その場の誰しも目が離せなかっただろう。
小気味良いギターとベースの短い掛け合いからはじまったのは、17曲目「Finder」。
「インディーズの頃からずっとある曲だったが、上手く形にならなかった。その後3rdALBUMに収録されてから、暫くやっていなかったが、今回のリクエストにて一位を獲得した曲」MCにて菅原から告げられてのスタートになった。
序盤の乾いたサウンドから、ジューシーで厚みのある爆音アンサンブルに替わる様は必聴必見。
指揮者の如く、バンド全体の頭を取る滝さんの呼吸によって、繰り返されるアレンジが終末的で強く印象に残った。
18曲目「キャンドルの灯を」。
スィングするライド、アップライトベースのウォーキングなどジャズとハードコアミュージックとのクロスオーバーを感じる楽曲。
アダルティな中にも、真っ直ぐで力強い9mmらしさは現存で、サビでは高らかに跳ねるスネアの音色に、皆が頭を空にして身体を揺らしていた。
19曲目、侘しさを纏ったコードストロークから始まったのは、「カモメ」。
遠くに聞こえる鳥の鳴き声の様にギターのボリューム奏法がとても叙景的。
他の9mmの楽曲と異なり、私は本楽曲には和的な女性のニュアンスを感じている。
淑やかでありながら、海の如く慈悲深く、それでいて海波に似た強さがある。
アウトロのアルペジオフレーズも、独特な憂いを帯びていて、9mmでは珍しい展開だと感じる。
鳴り止まぬ拍手の中、「19周年、なんだか不思議。いつもありがとう」と菅原は改めて観客に感謝を伝え、ライブはラストパートへと帆を進めた。
20曲目「Brand New Day」。
曲名らしい希望感に満ちた楽曲。兎に角聞いていて気持ちの良いコード感と、王道的ながらエモーショナルな展開が観客の心を確かに掴んでいた。
この夜この場所でこの音を浴びる事が出来る事の喜びを、強く噛み締める様な多幸感のある演奏であった。
21曲目「The Revolutionary」。
9mmの中でも一番と言って良いほどヒロイズムに溢れたサウンドが特徴的な楽曲。
革命後の中にも変わるものと変わらないものがある事、世界とは自由で、自由とは個であるという哲学的なニュアンスを感じさせる歌詞もまた魅力的で、「世界を変えるのさ」と叫び上げる様には、何度見聞きしても、鳥肌がたってしまう。
熱気込み上げる中、披露されたのは22曲目「名もなきヒーロー」。
王道的な力強いロックナンバーの中にも、縋ることのない律した個を感じさせるナンバーで、救済的なリリックもとても魅力的だ。
23曲目「新しい光」。
突き抜ける光の如く、完成されたメロディーが我々の心を突き刺す。
19周年を物語る堂々たる圧巻のステージと、子供に帰った様に笑顔で、その潤んだ瞳を隠さんとする観客達の姿に、なんとも形容し難い幸福感に包まれた。
本編ラストは「Punishment」。
滝と菅原による掛け合いの前奏から、突然掻き切るように繰り出された滝の超速カッティング。
プラズマ管の中を走り狂う稲妻の様に、秩序の外側で鳴り響くカオスなサウンドを目の当たりにし、面喰らってしまった。
弦楽器3人によるトリプルユニゾンソロも披露され、その出立ちは神々しさすら感じられた。
菅原のボーカルは、人間性が表れている様に真っ直ぐで、凛々しくも暖かな優しさを感じさせる。
滝のギターは、いつの時も衝動的で人々の印象に強くイメージされる様な強さがある。
中村のベースは、安心感と緊張感を併せ持った空気感を纏い突き進んでいくような、独創性を感じる。
かみじょうのドラムは、アンサンブルを下地から支え、バンドを大枠から統率し指揮する様な聡明さを感じる。
それぞれの魅力を輝かせながら19周年のラストを締めくくるに相応しい、圧巻のステージングを最後まで披露した。
繰り返し叫び続ける観客たち、その熱気は最後の最後まで溢れかえっていた。
頭からラストまで、駆け抜け続けた彼らのステージ。
19年の歳月で洗練されたのは、音楽性や演奏力だけではなく、人間の底力だと感じさせる様な、圧倒的な個性を魅せてくれた。
<SET LIST>
そんな素敵な公演の中、オヤイデNEO製品も活躍していました。
滝さんのボード内には、NEO Solderless SeriesとG-SPOT Cableのパッチケーブルが導入されていました。
オヤイデ電気が展開するNEO Solderless Seriesは、作業性の容易さ、高耐久、高音質の3つを揃えたソルダーレスケーブルで、さまざまな現場で活躍される滝さんの足元をしっかり支えていました。
そのサウンドは、オヤイデ電気オリジナル導体102SSCを採用した事で、現代の音楽シーンに合ったワイドレンジと解像度を実現しています。
G-SPOT Cableは長らくオヤイデ電気を代表する楽器用ケーブルの一つで、粘りのある中低域が魅力です。
滝さんからは「ギターの太い部分を抽出するような効果があり、歪ませるとゴリっとしたところが出て気持ち良い」とご好評いただいています。
中村さんのアンプの電源ケーブルにはBLACKMAMBA-αが、DI/プリアンプにはTUNAMI GPX-Rが導入されていました。
アンサンブルの中でも圧倒的な存在を放つ中村さんのサウンドは、こういった部分にも隠れているのですね。
TUNAMI GPX-Rは、力強いパンチとド派手な煌びやかなが特徴的な電源ケーブルで、アーディオファイルのみならず、ベースのシステムとの相性はかなり高いです。
と言いますのも、低音域の太さがしっかりありますので、ベース環境に導入される方は多く、DJやクラブミュージック界隈では本製品を使用した際のキックの圧力を特にご好評いただけているからです。
対するBLACK MAMBA-αはTUNAMIとは打って変わって、シャープで余分な音がないクールなケーブルと言えるでしょう。また名前の如くそのスピード感も魅力の一つです。
TUNAMIでベースらしい太さと迫力を作り上げながらも、BLACK MAMBAで低音域をグッと絞り上げアウトプットする。
計算されたチューニングですね。実際の出音も極上のバランスでした。
ベースからのケーブルやボード内の配線にはForce77’Gが導入されています。
高いフラット特性を持ち合わせながらも、楽器用にチューニングされた本製品は、余分な味付けをせずに全体をブラッシュアップしたサウンドが出せるのが魅力です。
中村さんからは「非常にクリアでフラットな印象で、楽器本来の音を忠実に出してくれる」とご好評いただいています。
Writting by Yuuki Miura
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