COLUMN
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ライブの現場で使用されているオヤイデ/NEO製品にスポットを当て、それらの魅力を紹介する企画『OYAIDE Live Report』
第11回は、THE SPELLBOUND 『BIG LOVE TOUR -BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary Special-』のレポートです。
THE SPELLBOUND (スペルバウンド)
BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之とTHE NOVEMBERSの小林祐介によって結成されたロックバンド。
2019年に行われた中野のヴォーカリスト募集オーディションを経て、2021年1月に配信シングル「はじまり」を皮切りに5カ月連続で新曲を発表し、2022年2月に1stフルアルバム「THE SPELLBOUND」をリリース。
始動1年目からFUJI ROCK FESTIVALをはじめ様々なロックフェス出演を果たし、ライブバンドとして唯一無二の存在感を知らしめる。
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●中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)
97年ベルギーのR&Sレーベルよりデビュー。
川島道行と共にBOOM BOOM SATELLITESとして活動し、映画「ダークナイト」や「YAMAKASI」等で音楽が起用されるなど国内外での活躍を果たす。
2016年に発表した「LAY YOUR HANDS ON ME」という作品でBOOM BOOM SATELLITESとしての活動を終え、プロデューサーとしても多くの作品を残す。
●小林祐介(THE NOVEMBERS)
2005年結成のオルタナティブロックバンドTHE NOVEMBERSのフロントマン・ソングライター。
2007年にUK PROJECTより1st EP「THE NOVEMBERS」でデビュー。
2013年にレーベルMERZを立ち上げ、コンスタントに作品を発表しながら勢力的にライブ活動を続けている。
本公演『BIG LOVE TOUR』は、BOOM BOOM SATELLITESのデビュー25周年を記念し、THE SPELLBOUNDが全公演、かのサウンドを再現する“BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary Set”でライブを行うツアー。
9月に北海道から始まり、今回の東京公演がツアー最終日。
会場は、昨年4月のオープンも記憶に新しいZepp Shinjukuでの開催となった。
5分押しでのスタート。会場のBGMと照明がゆっくりと消えていく。
1曲目『HELTER SKELTER』。
音が鳴ると同時に、会場には大歓声が轟く。
歪んだギターと美しいハウリング、1発目から全てが解放されるような、圧倒的空気感を放っていた。
Gt.Vo小林さん、Gt.中野さんのギャリンギャリンのギターがホワイトノイズの様にかき鳴らされる。
そして両翼に鎮座するサポートDr.の福田さん、大井さんによるツインドラムも重々しくビートを刻む。
これだけの轟音が轟いている中、埋もれない小林さんの歌声の存在感には、毎度驚かされる。
続け様に繰り出されたのは、2曲目『Moment I Count』。
イントロの電子音が鳴るや否や、観客からは絶叫にも似た歓喜の声が挙がる。
シンベのエレクトリカルなリズムとリアルのツインドラムによるリズムアンサンブルがとてもダイナミックで心が沸る。
ブンブンの楽曲には、焦燥感とはまた違う切迫感を常に纏っていると感じる。聞いていて常にドキドキさせてくれ、それでいて何処までも着飾らない。血肉湧き踊る、魂震えるストレートさがある。
3曲目に披露されたのは『Dive For You』。
一曲一曲が披露される度に、照明に映る観客達の待ってました!という反応が、気持ち良い。
フルスロットル全開で駆け抜けるような、鋭いジャンキーさが心地よく、フロアはその音に当てられ皆踊り狂っていた。
4曲目は『MORNING AFTER』
蠢くようなシンセサウンドから徐々に音がクラフトされていき、サビで爆発するバンドサウンドの展開に心がときめいてしまう。
フルレンジシンセの極上のサウンド、活き活きとした16分のハット、バキバキのフライングVのドライブサウンド、どの音も常に最高の状態で鳴っていて、気持ちの良いアンサンブルだ。
私が特に感動したのはツインドラムのサウンドだ。
芯のあるタイトでアタック強めなキックを全身に感じる。
また重すぎず軽すぎないスネアの音も絶妙で、アンサンブルによくマッチしている。そしてこんなに金物の音が目立っているのに、他の楽器の帯域を邪魔していないのが不思議な程、全体のバランスが計算され尽くされているのを感じる。
ここまでストレートにかっこいいと、難しい事は考えず仕事は忘れ、皆と同様に頭空っぽになって踊りたくなってしまう。
明るいパッドサウンドから繰り出されたのは、5曲目『LAY YOUR HANDS ON ME』。
英雄感、祝福感、未来感を感じるサウンドが魅力的で、特別な展開では無いが、ドラマチックで説得力のある自由さを感じた。
後半の小林さんのとても滑らかなファルセット、曲の雰囲気も相まって喉に天使でも飼ってるの?と思った。
6曲目は『EASY ACTION』。
フライングVのリアピックアップから放たれる、荒々しいギターサウンド。極悪と言っても良いかもしれないほどの切れ味を持ったサウンドが極上の一言に尽きる。
これだよ!皆んなこういう音を目指しているし、求めているだよ!という感覚。
全能感すら感じてしまうドライブサウンドだった。
私は当時のブンブンの音を体感したことはない、しかし今日この場にいる観客達が全て物語っていた。これ以上は述べる必要がないだろう。
7曲目『Push Eject』
リムショットが気持ち良いイントロ。アンサンブルないに存在する一個一個のアタックに逃げがなく、嫉妬を覚える程にとても純粋。
また小林さんが操るワウペダルのサウンドが、これでもかと言わんばかりにワウワウしていて、最高だった。
企業のレポートではあまり使いたくない言葉だが、今回はこういうしかない、最高だ。
8曲目『Kick It Out』。
切り裂くようなギターストローク。
これぞブンブンといわんばかりのどストレートなカッコ良さを仁王立ちで見せつけてくる。
飛び跳ね、もみくちゃになるオーディエンスを2階から眺める私は『いいなぁ』と思わず呟いてしまった。
ここまでライザーサウンドが様になるバンドはそういないだろう。
8曲ノンストップで駆け抜けたBOOM BOOM SATELLITESの楽曲を終え、「The Spellboundです」と中野さんが口を開いた。
「みんなめちゃめちゃ楽しそうだよ!ブンブンとスペルバひとつになる夜、最後まで楽しんで」と手短に話し、ライブは次のブロックに帆を進めた。
9曲目『名前を呼んで』。
イントロで繰り出されたドラムの力強さに面食らってしまう。
そこから展開される喪失感と荘厳感を纏ったサウンドに、先程まで披露されたブンブンの楽曲達とは違った無垢で着飾らない素直な自由さを感じた。
それはまるで大空の中に自分が存在しているような広大なものだった。
ポップスライクで立体的なピアノサウンドからスタートしたのは、10曲目『すべてがそこにありますように』。
モダンな音像や展開の中に、繊細で美しいバンドサウンドが表れていた。
ゲストボーカルXAIさんとの男女ツインボーカルもその美しいサウンドに一役買っていて、心打たれた我々はその壮大な物語の様なステージに見惚れてしまった。
11曲目に披露されたのは、8月末にリリースされた最新楽曲『LOTUS』。
エレクトロポップなサウンドと次々と紡がれるツインボーカルが気持ち良い。
高らかに歌い上げる歌声は、何処までも伸びていくようで、なんだか何処かへ消えてしまいそうだとも感じた。
12曲目は『はじまり』。
心地よいダンサブルで清涼感のあるサウンド。
抽象絵画を見て、その美しさに見惚れてしまうような、旅の宿で窓から見える初めての景色に感動するような、そんな感覚と似てる。
シューゲイズ感の強い、壮絶なクライマックス。全ての音が波壁の様に迫り来て、混ざり合う様には大きな感動を覚えた。
13曲目『なにもかも』。
そっと歌い上げるように美しく言葉を置いていくイントロ。
サビ前に全ての音がアウトし、サビと同時に全ての音がインする展開にギュッと心を掴まれた。
本楽曲には、美しいサウンドの中にも、何かをもがき掴み取るような、疾走するニュアンスを感じるのは私だけだろうか。
一楽曲内で展開される静動のギャップやバランスもとてもセンチメンタルでドラマチックだ。音の海の中で天に慟哭する様に叫ぶ小林さんの姿が強く印象に残った。
14曲目『DANCER ON THE PAINTED DESERT』。
ダーカーな緊張感、ポエトリーリーディングとこれまでに無い展開。
そこから解放されるようなサビが、とてもキャッチーなのも魅力的だ。ブンブンの要素も感じながら、スペルバらしい大自然の様な美しさも感じる。
まさにブンブンとスペルバがひとつになったような印象を受けた。
15曲目『FOGBOUND』では、のっけからダンスモード全開に。
タイトに鳴り響く超低域と無尽蔵に埋め尽くされるリズムが心地よく、新宿の夜らしく、皆理なく踊り狂っていた。
本編ラストは、『FLOWER』。
スペルバらしい着飾らずストレートに表現されるバンドサウンドと、一才無駄を省いた様に突き進んでいく展開に心打たれる。
照明に照らされた川島さんのフライングV、それを小林さんに託した中野さん、様々な感情持ちながらもそれを強く握りしめる小林さん、その大きなストーリーを我々は音で感じ、その大きな存在を前に、感謝と感動の思いが溢れるばかりであった。
楽曲が終わると、鳴り止むことのない拍手が会場を包み込む。
「とっても良い気分、僕は片割れが早く亡くなってしまったので、その分長生きしようと思っている。
今日いるお客さんも一緒に大人になって、幸せな時間を過ごしたい。
僕はみんなより長生きするので、みんなを見送る音楽を今後も発信していきます。」と語った。
「そして僕の音楽には小林君が必要。様々な表現をしてくれて、みんなを楽しくさせてくれる。今後も応援してほしい。」と言葉を続けた。
「僕は中野さんより1年長生きします。」小林さんの一言に会場は温かい笑顔が溢れる。
「まだまだバンドも人生も続くけど、僕は今回のツアーで川島さんのギターと旅をした。
最初は言葉にならない気持ちで一杯で、恐れ多いというプレッシャーもあった。
それもツアーと共に超えて、バンドを通じ出会い時間を共有し、宝物をプレゼントしてくれる。
今後もブンブンの音楽を大切にしていきましょう。」と話し、二人に再び大きな拍手が送られた。
「かけがえのない時間ありがとう。
もう少し楽しませたいから、もう少しお付き合いください。」
中野さんの一言で、アンコールが始まった。
アンコール1発目は『BACK ON MY FEET』。
アンコールで二人の思いを聞いた後に披露されるBACK ON MY FEETには、私も鳥肌が止まらなかった。
実際に一音目が放たれた瞬間、四方からの絶叫が止まらない。
そして感動したのは、観客の手拍子が恐ろしいほど揃っていたのだ。
二人の言葉に大きく胸を打たれた彼らの心からの手拍子は、奇妙なほどに揃っていた。
それに応えるように、力強く演奏する様に形容しがたい暖かみを感じた。
アーティストも観客もそれぞれがお互いに感謝を向けて、それが終わりなき循環を繰り返し、大きな愛を作っていく。
全てのアーティストとオーディエンスが行っているものなのかもしれないが、スペルバにはその説得力を強く感じた。
そしてブンブンの音楽にはカッコよくない、瞬間が1音もない。私はそう感じた。
アンコール2曲目は『DRESS LIKE AN ANGEL』。
スタートから重厚感たっぷりのドライブサウンドで、観客のヒートアップが止まらない。
先ほどから、関係者席の方でもすでに何人か踊り出していた。
轟くような音の壁に全身が包まれる感覚、もう直ぐ終わりを迎えるであろう今日という特別な夜を噛み締める様に、皆が楽しんでいる姿は強く記憶に刻まれた。
アンコールラストは『Sayonara』。
私が初めてThe Spellboundを見たのは、2021年冬の新木場COASTだった。
個人的に最後にコーストで見たライブで、とても印象に残っているのだが、その1発目に披露されたのがSayonaraだった事を思い出した。
最初から完成されていたスペルバの世界観やサウンドだったが、その時からどんどんと進化していっている事を改めて感じる、そんな感動のフィナーレだった。
何度かそれっぽい言葉を出してきたが、私はThe Spellboundの音楽を、空や海や連なる峰の如く大自然のようだと感じている。
新宿という都会真っ只中48階建てビルの中で聞く大自然は、新たな希望や未来、底知れぬ愛を感じさせてくれるものだった。
<SET LIST>
そんな素敵な公演の中、オヤイデ/NEO製品も活躍していました。
今回のツアーで川島さんからお借りしているというフライングV、なんとも味のある美しさに息をのんでしまいます。
アンプは、MeseBoogieにマーシャルの組み合わせを使用されていて、重々しい重厚感と突き抜ける様なコード感をアウトプットしていました。
小林さんの要塞のようなエフェクターボードの中には、Solderless SeriesとDC-3398LLが導入されています。
弊社が開発した精密導体102SSCを使用する事によって得られる『ダイナミックレンジの拡張』『解像度の向上』。
それらに加えて、ノイズの減少やモダンライクな出音も魅力です。
中野さんのベース/ギターからのケーブル&ボードからアンプまでのケーブルには、Ecstasy Cableが導入されています。
中域に圧倒的な塊感と艶を感じさせる本製品は、ベース/ギターどちらにもマッチしていましたね。
中野さんからは「ストレートで脚色の無いサウンド」「太く伸びやかなサウンドが楽器のポテンシャルをそのまま伝えてくれる」とご好評いただいていて、ライブレコーディング問わずご使用されています。
またシンセ周りのラインケーブルには、PA-02を使用されていました。
今回のライブでも披露されたフルレンジのシンセサウンドは、絶品でしたね。
PA-02は高いダイナミックレンジと解像度、空間表現能力に長けたケーブルで、シンセ周りとの相性はバツグンです。
フロアの最後方からでも美しい藤色が目立っていました。
同期用のMacBookにはd+USBケーブルが使用されていました。
このd+には通常のUSBケーブルよりも太い導体を使用していて、それにより安定したバスパワー供給が可能になります。
またコネクタ部の差し込みにも拘り、振動や衝撃にも強く設計されています。
これらが、多くの現場や製作現場でご好評頂けているd+USBの特徴で、今回のライブでもそのポテンシャルを遺憾なく発揮していました。
素晴らしいドラムを披露されたサポートドラムのお二人の環境には、弊社製のイヤモニ延長ケーブルとPA-08 Multi Cableが導入されていました。
PA-08 Multi Cableは、ワイドな帯域をピークもディップもなくフラットに再現する為に開発された製品で、癖の少ないサウンドが魅力です。
またしなやかで軽量である点も特徴で、接続する機器へ負担を掛けにくい代わりに通常はスタジオで固定して使用されることを想定した設計になっていますが、こちらのモデルはPAチームからの依頼で、現場使いでも真価を発揮できる様に断線予防を施した特注品です。
また大井さんのモジュール周りのケーブルにはQAC-222/d+RTS classB/PA-02が導入されていました。
QAC-222は中域にフォーカスしながらも、ナチュラルで太さのあるサウンドが特徴的で、リズム周りのモジュールとも好相性でしょう。
また最終のアウトプットにはPA-02を使用していて、それまでの導線でチューニングしたサウンドを着色なくアウトしていますね。
いかがでしたか?
THE SPELLBOUNDにしか出せないサウンド、そして再解釈され演奏される、今のBOOM BOOM SATELLITES。
歴史を感じさせる特別なステージの裏には、それを支えるケーブルアクセサリーと言う小さな世界が存在していて、ストーリーの乗った楽曲たちから放たれるその一音一音に、さらに深みを与えていると思います。
改めまして、BOOM BOOM SATELLITESデビュー25周年おめでとうございます。
不思議な現象だ。
西武線のホームから新宿の狭い夜空を眺めつつ、瞬きをするたび瞼の裏には、先程までの眩い照明のステージが映し出される。
会場の熱気で暖められた体が徐々に冷えていき、上着に袖を通すと、本川越行きの発車ベルが鳴り響いた。
Writting by Yuuki Miura
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